ミュージアムグッズのつくりかた【佐賀大学特別講義】

佐賀大学特別講義

がちゃん
がちゃん

大学で授業?!しかもフル尺で!!?

テーマはミュージアムグッズ

今回お話させていただいたのは、佐賀大学芸術地域デザイン学部の学生さんたち。今年4月から始まったゼミの特別講義を行う講師として呼んでいただきました。なんとこのゼミ、今後ミュージアムグッズを研究、さらには制作、展示も考えているそうです。参加したいし、展示には絶対に行きたい。

テレビや雑誌で特集されることが増えたミュージアムグッズ。大澤夏美さんによるバイブルと言うべきミュージアムグッズ書籍が3冊刊行されています。「ミュージアムグッズのチカラ」「ミュージアムグッズのチカラ2」「ときめきのミュージアムグッズ」は必携の書です。

さて、九州の考古にこだわって古代フェスを開催している私に声をかけていただいたということは、九州にぐーーーーーっと根付いたミュージアムグッズ、考古グッズやイベント作りについて話したら良いということですね。おまかせください!!!

それでは、授業をはじめまーす!

まず、私は考古プロではなく、考古ファンのひとりであることを強く熱く説明しました。

考古プロ:考古学を専門分野とする人(在野含む考古学者、学芸員、発掘に関わる人などなど)

考古ファン:埴輪が好き、土偶が好き。遺跡巡りが好き。考古学の成り立ちが好き。さまざまな考古沼の住人
※あくまでコダイプレスの定義です

大阪から福岡に移住して好きになった古墳。特に装飾古墳に強く惹かれて気づいたことがあります。それは、博物館や資料館に行っても、地元の考古グッズが無い!あってもポストカードくらい。(2010年当時)

日本全国で踊る埴輪がダンシンオールナイト。言葉にすればー♪ 嘘に染まるーーーー♪
ご当地グッズのように並ぶ踊る埴輪グッズを見るたびに心の中で「埼玉県から出土した埴輪だよーー!」と叫んでいました。その度に九州各地の出土遺物や文化財を元にしたグッズが欲しいという気持ちが盛り上がるのです。想いが版築のようにしっかりと積み上がった結果、2015年夏、九州の古代を全力で楽しむ古代フェスが誕生したのでした。

地域の文化財からストーリーを見つけていこう

九州の古代をとことん楽しむ!をモットーにしている古代フェス。地域で出土し、調査され、保存されてきた文化財を深く知って、魅力的な考古グッズを作るためには、とことんストーリーを見つけていくことが大切です。

踊る埴輪や遮光器土偶などの誰もが知る文化財に頼らなくても大丈夫。地元から出土した文化財をじっくり調べていくことで、共感を呼ぶポイントが見つかるはず。今の今まで残っていること自体が奇跡。様々なストーリーが積み重なった結果なのですから。ここからは、地域の博物館や資料館に展示されて大切にされているものの、誰もが知るスター的存在ではなかった文化財を例にしていきます。

がちゃん
がちゃん

古墳時代の人物埴輪に登場していただきましょう。
宗像市の みずら太郎さーーーん!

形状:古代の人の髪型「美豆良(みずら)」を結っているが、大きすぎる。

あだ名:みずら太郎

出土地:現在のユリックス宗像の敷地内(地域の人たちが身近に感じる!)

グッズ展開:みずら太郎のキャップ、スプーン、地域のパン屋さんによるパン「ぱん太郎」

イベント展開:同じ宗像市出土のジョッキ形土器の名前イメージから、陶芸作家さんが作ったジョッキ形土器カップで地元産ビールを飲むイベントを開催。

がちゃん
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続いて、縄文時代の人面形土製品です。
大分県中津市のガッキーさーーーん♡

形状:顔部分しか見つかっていない。土器の一部だった可能性あり。

あだ名:法垣遺跡のガッキー(遺跡名より、ガッキー。新垣結衣さんにも肖っています)

出土地:現在の道の駅なかつの敷地内(地域の人たちが身近に感じる!)

グッズ展開:色を生かして、革のポーチ、陶器マグネットなど。素朴な顔立ちをフューチャー

イベント展開:縄文ドキドキ会さんによる縄文ドキドキ総選挙にて人気投票7位になる。グッズ展開やあだ名決定という盛り上がりによって、博物館に展示されている文化財が、手の届くアイドルのような存在に。

みんなで考古グッズを考えてみよう

グッズやイベントを考える上での古代フェス的ポイントを押さえつつ、みんなで考古グッズを考えてみましょう。みずら太郎、ガッキーに負けないくらい、一般的に地味に見えてしまう文化財をチョイスしました。こちらです。

直弧文(ちょっこもん)です。

謎めいているーー!「直弧文」という名がついて100年以上経ちますが、意味や理由が未だ判明していない。ミステリアス文様。いろいろな説の中から、個人的に好きな説をお伝えした上でグッズ案を考えてもらいました。

直弧文にまつわるエトセトラ(がちゃんセレクション)
  • 複雑なデザインなのに、刀や鏡、土器などにも描かれている。
  • 今でも魔除けとして使われる地域があるスイジガイという貝がデザインの素では?
  • 貝の中身をイメージしたデザインでは?
  • 閉じた貝の口を開けるのは難しい。封印のイメージ?
  • 絶対に描くべき文様だけれど、難しいので後々簡略化されたのが三角文では?

グッズ案を考える上で大事なのは、いろいろなストーリーを見つけて掛け合わせること。
純粋に見た目から着想を得たり、出土地域の特産品と掛け合わせるのも素敵。ネット検索して出てきた情報をアイデアに反映するのもイメージが拡がって楽しい。ちなみに、私は「チョッコモンチョコ」と書きました。ダジャレから生まれるグッズもいいよね。

なんと50を超えるグッズ案が集まりました。(画像は、あえてぼんやりさせています)

アイデアがアイデアを呼び、白熱するアイデア会議。もう、みんなでやろう?古代フェス。古代フェス作家さんによってグッズ化が実現した暁には、発案者にプレゼントしたいので、付箋の裏に名前を書いてもらいました。確実に連絡が取れる在学期間中に実現させなくてはいけませんね。

声をかけてくださったのは、考古プロだった

今回の特別講義の場を作ってくださったのは、佐賀大学芸術地域デザイン学部准教授の藤井康隆さん。
しだみ古墳群の…というとピンとくる古墳界隈の方が多いはず。愛知県の名古屋市博物館に所属されていた時期に、あの、しだみ古墳群整備に大きく関わった藤井さんです。そう、考古プロ!

地域デザイン学部とミュージアムグッズというテーマ、最高ですよね。今回、少しでも関わることが出来て光栄です。考古遺物や遺跡って、過去の人たちが遺したデザインとも言えると思うのです。「現代を生きる私たちに響く部分があるはず!共感する場を作りたい!」という気持ちで始めたと言っても過言ではない古代フェス。今回の特別講義は、学生さんたちとワイワイ楽しすぎる古代フェス企画会議をさせていただいたような幸せな時間でした。藤井さん、学生のみなさん、飛び込みで参加してくださった先生方、本当にありがとうございました。

蕨手文ポーズを強要するがちゃん(左)と、藤井先生(右)ありがとうございます。

古代フェス作家さんたちの考古グッズをみながら、キャッキャする時間、プライスレスでした…。佐賀でも古代フェスが開催できるように頑張ります。