国宝級、日本初と地元新聞一面で取り上げられた考古的大発見。
誰もが知っている玉虫装飾といえば、せーの!「玉虫厨子」(たまむしのずし)奈良県斑鳩にある法隆寺が所蔵する国宝ですね。テストに出る大事な内容なので、覚えている人も多いはずです。
もくじ
発見されたのは国宝級玉虫装飾馬具
今回発見されたのは玉虫(装飾)の馬具。日本初、そして国宝級の遺物を実際に見る事が出来ると聞いて、展示初日に古賀市立歴史資料館へ向かいました。
国史船原古墳展 馬王~それは誰だったのか~
古賀市立歴史資料館で2020年11月14日(土)から12月20日(日)まで特別展が開催されています。玉虫装飾馬具が国宝指定されたら出土した場所ではない施設で収蔵されたり、出土した古賀市に残ったとしても気軽に見る事が出来ない可能性もあるので、今のうちに謁見しておかなくては。
展示室の中へ進んでいくと、ほぼ中央に身長より高いガラスケースがあります。その中に現物とレプリカが並んで展示されているのが国宝級と言われる玉虫装飾馬具。それでは、正式名称を発表します!
にれんさんようもんしんようけいぎょうよう
二 連 三 葉 文 心 葉 形 杏 葉
長い。「葉」って漢字が3回も出てくる。途中でお経読んでいるような気持ちになります。ありがたやありがたや。
これが考古のロマンやー!
「古墳から、そんなに貴重な馬具が出たなんて凄い!」と思っていましたが、大いなる間違いでした。この馬具が発見されるまでの凄いところは沢山あるのですが、2つに絞ってお伝えしましょう。
- 古墳で出土したものではない
- 発見から5年後、玉虫の翅を見つけたのは人間の目
① 古墳の横に宝の穴があった
古賀市唯一の前方後円墳と言われる船原古墳は、以前まで円墳だと考えられていました。認識が覆ったのは2013年。古墳横から土坑が7基見つかったのです。
ただの穴ぼこではありません。500点を越える遺物が出土したのです。しかも、誰にも触れられず埋めた時のオリジナルな状態で!!!他の遺跡では一部が欠けていたり、盗掘などで奪われたり、欠損している等で全体像が分かっていなかった馬具がなんと一括セットで少なくとも6組見つかりました。
これらの発見から、円墳だと思われていた船原古墳の発掘調査が進み、前方後円墳であることが分かったというミラクル!
②人の目で見つけられた玉虫のハネ
オリジナルな状態で発見された土坑内の埋納品には、布や漆なども残っている可能性が考えられるため、土ごと掘り出した状態で九州国立博物館や九州歴史資料館へ送られてエックス線やCTスキャナで撮影、解析が行われました。
ひとつひとつの埋納品から土が落とされて戻ってきたのは5年後の2018年8月のこと。構造、サイズ、気づいた点や感じたことを記載していく実測図作成にあたっていた教育委員会の職員さんの目に見えたもの…それは、飾り板の下に覗いている虫の羽の薄い筋目でした。
再度CT解析にかけた結果、20枚の玉虫の翅が挟み込まれていることが判明。
最新技術と人の目のタッグが生んだミラクルパート2!
考古のロマンって、こういうところにあるんだと思うんですよ。丁寧な積み重ねの上に見つかる細かな情報、それらが合わさった時に湧いて出る大発見。それは今かもしれないし100年後かもしれない。
馬具コレクション~漢字を添えて~
歩揺付飾金具 雲珠(ほようつきかざりかなぐ うず)
こちらも国内初の出土品。
鞍の後ろに取り付けて馬の動きに合わせて金の飾りがキラキラと揺れる馬具です。六角形の透かし入りの金属板の上に、歩く度に揺れる複数の金具が幾何学的に配置されています。
ガラス装飾付雲珠(がらすそうしょくつきうず)
中央の白い部分は、鉛やケイ素を含む鉛ガラスが風化したもの。
レプリカのような美しいガラス装飾付の雲珠や辻金具は新羅の王陵などから発見されているが、国内では初めて発見された。そう、これも国内初の出土品。
花形杏葉(はながたぎょうよう)
日本各地で見つかっている花形の馬具。
古代大王家の皇子や皇女の養育を担当した集団である壬生部(みぶべ)と関係が深い地域に多く見つかるという傾向が指摘されているそうです。
一般の地域首長と比べてより深ーーく大和王権と繋がっていた可能性が考えられる、ということですね。
あああ、馬具は見事に漢字だらけ。目が疲れたと思います。必殺技として使えそうな気がします。船原古墳から望む夕焼けで、しばし目を休めてください。
国内3例目の発見である馬冑(ばちゅう)など、まだまだ紹介していない馬具や出土品があります。12月20日迄の展示期間中にあともう1回行きたいと思っています。
福岡県古賀市中央2丁目13−1
リーパスプラザこが 2階
休館日 :月曜日/祝日の場合翌平日
開館時間:10時~18時※入館は17時半まで
入館料 :無料
電話番号:092-940-2683